オンライン VS 現場 バイヤーインタビュー(前編)

バイヤーって一体どんなところで買い付けたり、どれくらい稼いでいたりするんでしょうか。

みんなが気になっていること、多いと思います。今日は、ファッションのオンラインと現場それぞれのトップバイヤーをお迎えして、思いっきり色々聞き出してみました。気絶しそうなくらい夢のある話から、それぞれの買付け事情、さらに日頃あまり接する機会のない両者の絡みなど、盛り沢山な内容でお届けします。

★現場バイヤー  Gさん(20代 学生)
首都圏の現場をメインに活動するバイヤー。
流行に左右されず、常に自分独自の読みを駆使しながら動くのがモットー。月間200万円以上売上げたこともある。

★オンラインバイヤー  Oさん(30代 主婦)
BUYMAをメインに活動するバイヤー。
主婦業のかたわらでBUYMAを始め、無在庫販売ながら年間の売上が4500万円を超える。

★インタビュアー Wataru Yamate
スニーカーもファッションも大好きなライター。自社メディア「SPOAL」を10月より立ち上げ、アスリート×ファッションを切り口に数々の記事を執筆。KICKS CEO名義でインスタグラムもやってます。

どんなきっかけでバイヤーを始めたのか

Q:今日はお二人のいろいろな話をお聞きできたらと思います、よろしくおねがいします。まず初めにバイヤー歴と今の活動に至ったきっかけを教えていただけますか?

O:「私は3年ぐらいですね。子供が保育園に通いだして時間が出来たので、自宅で家事のスキマ時間に何かできる仕事はないかなと探していました。ファッションが好きだったので、できればそこに絡めたことがしたくて。ちょうどその頃にBUYMAってサービスを見つけて、日本にいながら海外からモノを仕入れてBUYMA市場で売って利益を出せるということを知りました。それがきっかけで3年間ずっとそこで活動しています。」

G:「僕は1年ちょっとです。2018年の2月くらいから本気で取り組み始めました。ちょうどSupreme(シュプリーム)の2018SSシーズンのタイミングですね。3年前の大学入学を機に上京してから、スニーカーやSupremeが好きで店舗へ足を運び自分のものを買っていたのですが、『売れるな』ってことに気づいて(笑) そこから、いらないものを売って資金を作るなどの準備にしっかり時間をかけて、2018年からはじめました。」

こんなことが面白くて、こんなことが辛い

Q:お二人とも、ファッションが「好き」というところから始めた点が共通していますね!
ではそんなきっかけで始めたバイヤー活動、ここがおもしろい!というところを教えて下さい。

O:「自分が好きなものだけが決して売れるわけじゃない、というところですね。逆にダサいなって思っててもそれが売れたりもしますし。後は、売れるものを見つける楽しさが、宝探しみたいなゲーム感覚で長く続けるモチベーションにもなっていたりします。」

G:「みんなが注目しているアイテムが、あまりプレ値(定価より高い相場価格)がつかないというところですね。むしろ逆にみんなが注目していないところのほうがだいたい毎週値段がついているので、そこはすごくおもしろいと思っています。」

Q:売れるものを見つける楽しさとか、みんなが注目していないところに儲けがあるとか、おもしろすぎるポイントですね。逆にバイヤー活動の中で、面倒くさい・これはイヤとか、なにかマイナスな点はありますか?

O:「日本人のお客様がすごく細かいという点ですかね。ちょっとした傷とか、付属品が足りないとか、、、顧客の99%くらいは日本人なんですが、細かいです….」

G:「現場は、表立った行動をするとSNSに晒されてしまうことですかね(苦笑)そこでは何も言われないのですが、後で『買えなかったのはお前のせいだ』みたいに叩かれていることもありました。その場で言ってくれたほうがまだ助かります….あと、やり取りする日本人の人が細かいという点は僕もオンラインの方と同じ意見です。」

O:「現場のバイヤーさんに質問したいのですが、例えばSupremeの並びだと、欲しい人と買付目的の人はどれくらいの割合なのでしょうか?中間みたいな人(欲しいアイテムが買えなかったら売るような人)もいるとは思いますが、大体の肌感でも教えてほしいです。」

G:「うーん、ほぼ全員買付目的に見えますね(笑) 自分用に欲しくて並んできている人は1割くらいじゃないでしょうか。」

「私自身並びに行ったことが何回もありますが、確かにそれくらいな印象です。それは欲しい人が並びに来ないというわけではなくて、買付の人たちは気合が違うので早朝から来たりもします。もちろん人数無制限に並べるわけではなく、ある程度の量で打ち切られるのがSupremeの並びです。なので、早朝からそんな人達が何十人単位で、何グループも先に来たら、打ち切られた時の割合ってだいたいそんな感じってことですかね。」

Supreme 代官山での並びの様子(筆者撮影)

G:「まさにその通りです。最近は打ち切りも早くなったりしてますから、欲しい人が並びに来る時間には締め切ってたりすることもあります。」

O:「えーーっ!? すごい(笑)」

「この前のブジュ・バントンのTeeが発売になったとき(Supreme 2019SS WEEK18 / 6月29日)なんて、とんでもない時間に打ち切りになったんですよね?」

Buju Banton(ブジュ・バントン) Tee / Gray

出典:hypebeast.com

G:「あれはヤバかったですね。場所にもよりますが、原宿は6時前に打ち切りになっていました。」

O:「えっ?金曜ですか?それとも当日ですか?」

G:「当日です。」

O:「当日….し、深夜とか終電で行かなきゃ買えないじゃないですか(笑)遠い人とか間に合わないでしょうし。」

「でも少し前までは1日2日の徹夜は当たり前のような感じでしたし、それに比べたらだいぶマシになったとも考えられますかね?時間的な拘束は遥かに楽になりました。」

G:「僕は2徹(2日徹夜)で確実に買えるなら、そっちのほうがいいですけどね」

(一同爆笑)

具体的に教えて!どんなブランドを取り扱っているの?

Q:場もだいぶ温まってきましたので、もう少し突っ込んだ質問をさせてください。お二人のメインとなる買付ブランドやアイテムについて教えていただけますか?

O:「基本的にはブランド品と呼ばれるものになります。ヨーロッパからアメリカまで取り扱っていますが、多いのは前者です。例えば、PRADA(プラダ)・GUCCI(グッチ)・Louboutin(ルブタン)・BALENCIAGA(バレンシアガ)といったところから、VETEMENTS(ヴェトモン)のような少しコアなところからも買い付けています。逆にLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)・CHANEL(シャネル)・GOYARD(ゴヤール)のように買い付けづらいものは無理して攻めたりはしていません。アメリカは、MICHAEL KORS(マイケル・コース)やKATE SPADE(ケイト・スペード)、COACH(コーチ)・TORY BURCH(トリー・バーチ)のようなところですね。」

G:「全く自分の領域と違う話なので、勉強になります。僕はスニーカーやストリートブランドのアイテムが中心ですね。スニーカーはやはりNIKE(ナイキ)・adidas(アディダス)がメインになっています。ストリートブランドだとさっきの話にあったSupremeはもちろん、PALACE(パレス)やFUCKING AWESOME(ファッキン・オーサム)、OFF-WHITE(オフホワイト)や藤原ヒロシ系、WTAPS(ダブルタップス)など、若い世代に人気のあるところはおさえています。」

O:「聞いたことあるブランドもありましたけど、知らないのが多すぎてびっくりしました(笑)」

オンラインバイヤーが活用する裏技的なサービスとは

Q:オンラインで買付しやすいものと、現場で買付しやすいもの、こうした違いを話せるのも面白いですね。この流れでお聞きしたいのですが、それぞれ“売れやすい”と感じるアイテムは何でしょうか?

O:「さっき話したブランドの様々なアイテムを買い付けていますが、シーズンを通じてずっと売れているのはバッグ類や財布です。季節で言うなら、これからの時期(秋冬)はCANADA GOOSE(カナダグース)、THE NORCE FACE(ノースフェイス)のアウター系が売れます。あとはMONCLER(モンクレール)のモンクラー。これはバイヤーズドライブというサービス経由だと9.6万円で仕入れられるのですが、国内定価は21万円くらいなのでかなり利益が出ます。」

MONCLER / MONTCLA(モンクレール / モンクラー)

出典:moncler.com

G:「ちょっとすみません。その『バイヤーズドライブ』というのはどんなサービスなんでしょうか?今の利益の話だけで、既にめちゃくちゃ驚いています。」

「私も初めて知りました!もう少しこのサービスについて詳しく教えていただけますか?」

O:「『バイヤーズドライブ』(以下『バイドラ』)というのはブランド品が安く買い付けできるようになるサービスです。『バイドラ』が欧米のセレクトショップと契約していて、そこで取り扱っているアイテムが安く買えるようになるんです。会員は、そこで買い付けたものをBUYMAやYahoo!ショッピングなどで販売することができます。始まって4年くらいのサービスなんですが、私はかなりお世話になっています。一番のメリットは無在庫で買付することができる点ですね。普通は安く買い付けたいときは最低限の購入保証が求められるケースが多いのですが、『バイドラ』は多数のバイヤーを会員として抱えているグループなので、1点だけの注文でも安くなります。」

G:「すごすぎる….僕は『バイドラ』って今日初めて知りました。何よりも、無在庫で買付できるのは強いと思います。羨ましいです(笑)」

O:「本当そうですね。会費が少し高いかもしれませんが、さっき話したようなモンクレールをバイドラから10%OFFで買い付けると日本定価の50〜60%になるので、それだけで会費はすぐにペイできてしまうんです。」

「現場の方も驚いていますが、改めてすごいサービスですね。実際に『バイドラ』で最大どれくらい稼いだのでしょうか?月間単位でも取引単位でも、お答えできる範囲で構いませんので、夢を見させてください(笑)」

O:「私は無在庫販売で、1取引あたり約10万円の利益を出したことがあります。主婦のおこづかいレベルでは考えられない額です。私の友人に至っては、BUYMAをやっていて月に120万円くらい利益を出していますよ。すごいですよね。」

「想像以上の数字がでてきて、インタビューに身が入らなくなりそうです(笑)本題に戻りますが、現場の方はいかがでしょうか?」

G:「季節によって、アウターやTシャツとか主力が変わりますが、基本的には定価が安いアイテムが売れます。基本的に買い手が若い人たちなので、資金力という点も大きな要因の一つだと思います。その分こちらの仕入れもしやすいので、オンラインの方とはまた違い、質より量という考え方で買い付けていますね。直近だと、Supreme(シュプリーム)やGirls Don’t Cry(ガールズドントクライ)のキーホルダーなんかすごく売れました。Tシャツは高くて買えないけど、キーホルダーなら買えるという中高生の引きが強かったですね。これらのブランドは、持っているだけでみんなに自慢できるようなものなので。もちろん、モノが小さいので発送コストも安い点も良いです。」

「9月に発売された、HUMAN MADE®(ヒューマンメイド)とGirls Don’t Cryのコラボキーホルダーなんて、1,800円くらいの定価なのにメルカリでは6-7,000円くらいで売れてましたよね。」

HUMAN MADE® × Girls Don’t Cryのキーホルダー

出典:humanmade.jp

G:「そうですね。単価は安いですけど、差分の利益が大きいので、数を売ればかなりの額になるんです。」

両者の決定的な違いは販売・仕入れのタイミング

Q:次の質問なのですが、毎月どれくらいの量を仕入れているのでしょうか?平均の買付金額でも構いませんので答えられる範囲で教えていただきたいです。

O:「私は基本的に無在庫販売なので”仕入れる”という行動はないのですが、受注に合わせて毎月300万円分くらいは買い付けていますね。」

G:「僕は毎日何かしら買付しているので、単純に計算しても30-40アイテム以上はあると思います。ただ、現場は無在庫販売がしづらいので、家のスペースとの戦いですね。寝かせているアイテムもありますし。」

O:「すみません、“寝かせ”っていうのはどういう意味でしょうか?」

G:「自分が買い付けたときに、『これは今後上がりそうだな』と思ったものはすぐ売らずに置いておくことです。販売直後の相場よりも上がることもあるので、買い付けたときにそういう判断をすることもあります。」

「これは現場ならではのすごく面白い手法ですね。リスクなく買付け〜販売までできる無在庫販売とは違って、在庫があるからこそ、すぐ売るか寝かせるかどうかを判断できると。つまり売るタイミングを自分でコントロールできる、ということですね。」

G:「そうです。たとえばOFF-WHITEとNIKEのコラボレーションスニーカーの例でいうと、定価2万円弱に対して、販売当時の市場価格は6-7万円でした。その時に売ってももちろん利益は出ていたのですが、今だと10万円に近いところまで価値があがっているので、中長期的には寝かせたほうが得ということです。」

OFF-WHITE×NIKEのコラボスニーカー例

出典:nike.com

O:「なるほど!それは面白いですね。だいたいどれくらいの期間で寝かせるのでしょうか?」

G:「本当にモノによるので何とも言えないんです。極端な例でいうと、今年の4月に発売されたTravis Scott(トラビス・スコット)とコラボレーションしたナイキのエアジョーダン1は、一気に相場が変わりました。このスニーカーの定価は18,000円くらいだったんですが、初動の相場が10万円前後でした。もちろん、その時点でも十分すぎる利益だったんですが、数カ月後に20万円くらいまでまた上がったんです。寝かせていた場合は、18万円くらいの利益になったという計算ですね。なので僕は初動の相場が落ち着いた頃に一気に買い集めて、ピーク時に5-6足くらい売りました。」

TRAVIS SCOTT × AIR JORDAN 1 RETRO HIGH OG

出典:nike.com

Q:ちょうどインタビューが半分くらいまで進んできました。ここまでのお話だけでとても濃い内容になっているので、一度まとめさせてください。改めてそれぞれの商品の買付〜販売までの流れを簡潔に教えていただけますか?

O:「基本的には、BUYMAで売るのが前提になっています。売れているものや売れそうだなと思うものを出品するところからはじめて、注文を待ちます。受注したら、海外のオンラインサイトから買い付けます。海外の価格と日本の価格で既に差が出ているので、横流しするだけでも単純に利益は発生するんです。その幅(買付価格と販売価格の差)をより大きくして利益を増やすために、『バイドラ』を活用しています。」

G:「現場もオンラインと少し似ていますね。まず、周りから発売前にオーダーがきたものや、自分で『コレはいけるな』と思ったものを買い付けに行きます。買えたらオーダーはすぐに納品しますし、そうでないものはヤフオクやラクマ、メルカリで売っています。もちろんすぐには売らないと判断したものは、寝かせます。」

単価の高いハイブランドのアイテムを安く買い付け、国内定価に近い価格で販売することで大きな利益の差分を作っていくオンライン。変化するニーズや常に変動する相場を読みながら、株のように華麗に売り抜けて利益を重ねていく現場。全く違うアプローチなのに、お互いにしっかり結果を出していて面白いですね!

(後編につづく)

オンライン VS 現場 バイヤーインタビュー(後編)

バイヤーズドライブ体験記

スニーカーもファッションも大好きなライター。自社メディア「SPOAL」を10月より立ち上げ、アスリート×ファッションを切り口に数々の記事を執筆。KICKS CEO名義でインスタグラムもやってます。