オンライン VS 現場 バイヤーインタビュー(後編)

前編よりもさらに突っ込んだ質問のオンパレードです。どんなアイテムを売っているのか、どれくらい稼いでいるのか、中々聞けないところまでお答えいただきました。おもしろエピソードを教えてくださいと言ったら、とんでもない内容が出てきてしまい取材中に気絶しかけたのもいい思い出です。オンライン・現場それぞれのバイヤーを目指す方々は必見の後編!

★現場バイヤー  Gさん(20代 学生)
首都圏の現場をメインに活動するバイヤー。
流行に左右されず、常に自分独自の読みも駆使しながら動く。月間200万円以上売上げたこともあるトップバイヤーの一人。

★オンラインバイヤー  Oさん(30代 主婦)
BUYMAをメインに活動するバイヤー。
主婦業のかたわらでBUYMAを始め、無在庫販売ながら年間の売上が4500万円を超える。

★インタビュアー Wataru Yamate
スニーカーもファッションも大好きなライター。自社メディア「SPOAL」を10月より立ち上げ、アスリート×ファッションを切り口に数々の記事を執筆。KICKS CEO名義でインスタグラムもやってます。

ぶっちゃけいくら稼いでいるの?

Q:ここからはさらに突っ込んだ質問を続けさせていただきます。実際お二人は毎月いくらくらいの利益を稼いでいるのでしょうか?

O:「いきなり来ましたね(笑)私は無在庫販売がメインですが、毎月300万円分買い付けて50万円の利益を出すようにしています。もちろんもっと買い付ければもっと利益は出せるのですが、無理をしすぎず安定して買付を進めていくという意味でも、このライン(50万円)を目安にしています。現金がなくてもクレジットカードがあれば、カードの支払いよりも先にBUYMAからの入金があるので、楽なんです。買付の規模はクレジットカードの枠によるので、実は『バイドラ』って私のような主婦から、買い付けを本気で仕事にしているような方まで様々なバイヤーがいるんです。」

G:「僕もだいたいそれくらいですかね。50万円は最低でも稼いでいます。」

Q:お二人の話を聞いていると、なんだか自分の人生を考え直したくなってきました。妬みの気持ちも込めてお聞きしますが、一番稼いだ月はどれくらいだったのでしょうか?

O:「12月はプレゼント需要が強いので1.5倍くらいは増えましたね、なので75万円くらいでしょうか。」

G:「200万弱です。美術品がよく売れた月がありました。」

O:「えっ、美術品ですか!?(笑)」

G:「村上隆関連ですね。元々の単価が高かったこともありますが、かなり市場価格が高かったです。発送は少し大変で、ヤマト運輸の保険をかけた発送サービスで送る必要がありました。」

村上隆の版画『天国に一番近い島のお花達。』

出典:oz-zingaro.jp

両者が活動するメイン販路はどこ?

Q:本当にすごすぎますね、涙で前が見えなくなってきました。買付けできるのもすごいですが、それをしっかりと売り切るのがすごいなと。お二人は得意な売り先があると思いますが、それぞれのポイントを教えてもらえますか?

O:「私はほとんどがBUYMAなので、そのポイントをお話しますね。一番は、『売れてから仕入れる』という流れをBUYMA側が認めてくれているところです。例えばヤフオクなども最近は予約型の販売がNGになってしまったので、この点はかなり大きいです。売り手にとってもそうですが、BUYMAのユーザーもそのルールを分かった上で購入してくれるので、双方にとって良い環境だと思います。」

G:「僕の場合は、リセールショップからのオーダーですね。買付できたらその足で店に持っていくだけなので、効率が良いです。もちろん利益だけでみるとラクマやヤフオクで売るよりも安くなりますが、買付〜販売までのサイクルが早い点は最大の魅力です。それに僕はまだ学生なのでカードの限度額も低いですし、現金で購入する事が多いです。大金を持ち歩くこともしたくないので、その日に買ってその日にお金に変えるという流れが一番合っていますね。」

「リセールショップからのオーダーというのは現場あるあるですね!渋谷や原宿のSupreme店舗の近くにもいくつかありますよね。土曜日に通りすがると、ショッパーを持って店に入っていく人をよく見かけます」

G:「まさにそれですね。現金で買い付けてすぐに売るというのは、現場のコツだと思います。」

センスが垣間見える”値付け” こうやって決めてます

Q:なるほど。ここもそれぞれの強みが出ているポイントなんですね。販売についてもう少しお聞きしたいのですが、お二人とも出品価格はどのように決めているのでしょうか?

O:「大半の場合BUYMAの中で既に同じ商品が売られているので、その価格を参考にうまく優位性を作るようにしています。必ずしも最安値にするわけではなく、同じ商品が複数あっても自分たちのものが選ばれるように、価格だけではない点を含めて工夫していますね。基本的には、最初に売るということはせず、既に出ている商品を後追いで出すことが多いです。」

G:「僕もだいたい同じですね。ただ、場合によっては自分が一番初めに市場に出すこともあります。その時は自分の希望価格を決めて出してます。」

「価格の設定って難しくないですか?ほんとにその人のセンスが問われる領域な気がします。」

O:「そうですね、これは段々精度が上がっていくものだと思います。もちろん私も初心者だったときは安値で売ってしまったこともありましたが、経験を積んで少しずつ上手になっていくのかなと。」

各販路のメリット・デメリットを解説

Q:売ると一概に言っても、「どこにいくらで売るか」だけでもかなり色々ポイントありますね。逆にここはオススメしない、という売り先はありますか?

O:「例えば楽天は経費がすごくかかってくるんです。出品した商品を宣伝しないと楽天内の検索上位に上がってこないので、そこにコストをかける必要も出てしまって。それにブランド審査も厳しいです。こうした問題があるので、例えば個人で小規模からはじめよう、という人にはオススメできないですね。基本的には無在庫メインで運用するのが一番楽ですから、BUYMA一択だと思います。」

G:「現場は、あまりそういうのがなくて。例えばラクマ・メルカリ・ヤフオクが有名ですけど、実はそれぞれにメリットがあるんです。メルカリは手数料が高いですが、売れるスピードが早いです。対策をしっかりしてくれているおかげで他に偽物もないので、商品が見られやすくて。逆にラクマは手数料の安さが魅力ですが、対策がされていないため偽物が溢れています。なのでこちらが本物を出してもそこに埋もれてしまうので、売れるスピードが遅いですね。ヤフオクは高額なアイテムの時に使うことが多いです。ユーザーの年齢層が高いので、高額な商品と相性がいいですね。思った以上に高く売れることもありますよ。」

トレンドやHYPEアイテムを把握するための情報の取り方

Q:BUYMAという一つの強いサービスで売っていくオンラインと、ニーズに応じて色んな売り先を選んでいく現場というまた違いが出ましたね。ちなみにお二人は、アイテムの販売情報はどこから取っていますか?

O:「基本的にBUYMA内で売れているものを調べて動く、というスタイルなので情報収集もひっくるめてBUYMA内で完結します。もちろん、情報を先取りしないと買えないような人気商品もありますが、すぐ在庫がなくなったりするので、買付が読めないので無在庫販売には適してないんです。もちろん広いファッション情報でいうと『WWD』や『HYPE BEAST』くらいは読んでます。」

G:「僕は、お店のブログとかインスタグラムをチェックしています。特にインスタグラムのストーリーはかなり見ますね。販売情報がゲリラ的にいきなりきた時に、たまたま近くにいたおかげで買えたこともあったので。大事な情報源だと思います。」

Q:特に現場は、情報の取り方もバイヤーの立派な武器なんですね。続いての質問ですが、バイヤー活動を通じて感じたトレンドの変化ってありますか?

O:「ヨーロッパブランドは特にデザイナーに(売上が)左右されますね。結構前の話になるんですが、SAINT LAURENT(サンローラン)のデザイナーがHedi Slimane(エディ・スリマン)というカリスマ的デザイナーだったんですが、その人が抜けてからさサンローランの売上が一気に落ちました。そしてそのエディが今度はCELINE(セリーヌ)でメンズブランドを立ち上げることになってすごい盛り上がっていたんですが、前任者であるカリスマデザイナー、Phoebe Philo(フィービー・フィロ)の影響は大きく、CELINEの売上は落ちました。ユーザーにとっては、エディよりもフィービーのカリスマ性が高かったと。結構デザイナーの移動によってブランドの上がり下がりがあるというのがありますね。」

G:「Supremeは2017年までは何買っても全部売れていたんですけど、2018年からは生産数が大幅に増えた事もあって、今では人気なものしか売れなくなりました。逆にスニーカーはもう何でも売れるってくらいブームが来ていますね。」

直近で儲かった&損したアイテムをこっそり聞いてみた

Q:なるほど。理由はそれぞれですが、やはりブランドの上がり下がりがあるのですね。最近で一番が儲かった・売れたアイテムはなんでしょうか?

O:「色々売れましたけど、一番盛り上がったのはGUCCI(グッチ)のキャンバスロゴや、大きくてわかりやすいロゴ系のアイテムですかね。財布とかバッグとかTシャツとかキャップがかなり需要多かったですね。あとFENDI(フェンディ)も昨年くらいからすごく売れました。これはきっと広告をたくさん打った影響もあると思いますが、海外だとKylie Jenner(カイリー・ジェンナー)、日本でも渡辺直美をインスタグラムでガンガン使ってましたからね。」

GUCCIのロゴ系アイテム

出典:gucci.com
出典:gucci.com

G:「僕はまず村上隆ですね。『ドラえもん』シリーズの版画がすごかったです。定価10万円くらいなのに、買った日に27万円で売れたこともありました。あとはバンクシーの関連商品ですね。フィギュアとか。」

2019年3月発売 村上隆 ドラえもん コラボレーション版画3種

出典:zingarokk.com

Q:では逆にこれは損した、もしくは思ったより売れなかったアイテムはありますか?

O:「まさにさっき話したCELINEのアイテムですね。今までずっと売れていたし、エディ・スリマンがデザイナーに着任するのですごい盛り上がっていたのですが、蓋を開けてみたら…..という感じでした。その売れなさが顕著にバイドラでも現れていて、CELINEって今までは良くて10%オフくらいでしか買えなかったのですが、エディのデザインのバッグは50%オフで売られていたんです(笑)」

エディ・スリマンがデザインしたセリーヌのバッグ

出典:celine.com

G:「僕は、NIKE(ナイキ)とCOMME DES GARSON(コム・デ・ギャルソン)がコラボした、エアジョーダン1ですね。もっと値段が上がるかと思ったんですが、全然市場価格も上がらなかったです。定価も高かった(40,000円前後)ので、在庫として複数抱えてしまったことはかなり痛かったです。」

NIKE COMME DES GARSON エアジョーダン1

出典:hypebeast.com

両者が狙う2019年これから狙い目のアイテム

Q:なんだか羨ましい話ばかり聞いていたので、こうした失敗談って逆に貴重です(笑)こうして色々予測しながら買付されていくと思うのですが、お二人が今年これから狙っているアイテムはなんでしょうか?

O:「これから秋冬がくるので、やはりアウターを狙っています。ハイブランドだと、MONCLER(モンクレール)とCANADA GOOSE(カナダグース)。もう少しロープライスなブランドだと、THE NORCE FACE(ノースフェイス)やPATAGONIA(パタゴニア)ですね。中でもバイドラで仕入れられるMONCLERには相当期待しています。今日お話したMONTCLER(モンクラー)とか、女性向けでいとうHERMINE(エルミンヌ)・FLAMMETTE(フラメッテ)が人気アイテムなんですが、それ以外にも海外店舗で余っているようなものもバイドラ経由で安く仕入れることができれば、国内定価とかなり差が出るので利益が作れます。そうした点からも、MONCLER全般を狙っていますね。」

MONCLER エルミンヌ

出典:moncler.com

MONCLER フラメッテ

出典:moncler.com

G:「やっぱり僕は村上隆です。具体的な販売スケジュールがアイテムは決まってないのですが、インスタグラムで版画や絵・フィギュアなど作られたものが少しずつアップされています。だいたいインスタに出たものがリリースされていくので、全力で狙っています。」

これまでの活動の中で体験した面白エピソードを公開

Q:狙った獲物は絶対逃さなそうなお二人ですね。盛りだくさんな質問をしてきましたが、もうすぐラストです。今までのバイヤー活動の中で、おもしろかったエピソードを教えて下さい。

O:「私の知人の話になりますが、一つあります。今年の2月に、80万円のミンクのコートを見つけたので、『(無在庫販売だし)売れたらいいな』くらいに思って120万円で出品したそうです。しばらく経ったらそんなものを出したことさえも忘れていたんですが、6月くらいになってもうすぐ夏が来るのに、そのミンクのコートが売れちゃったんです。さすがにもう残ってないだろうなと思いながら買い付け先を見たら、なんと残っていて!しかもセール期間で買値が40万円になっていたらしく。結局手数料を引いても60-70万円くらいの利益になったと聞いて笑っちゃいました(笑)」

「おもしろいというレベルを超越したエピソードですね(笑)現場の方はいかがですか?」

G:「僕はBE@RBRICK(ベアブリック)のREADYMADE(レディメイド)コラボの1000%が当選した時の話ですね。色んな売り先に当たったことを伝えたら、全員から『欲しい!』という連絡を受けました。そこから買値を聞いて回るんですが、そこでオークションみたいな現象が起きちゃったんです。ある人が50万円と言ったら、別の人が55万と言う。そしたら別の人がまた65万出すと言い、そうやってどんどん値段が上がっていった結果、定価30万円の商品が最終的に95万にまでなりました。なんとしても手に入れなければいけないモノだったみたいで、95万円で買った人は『赤字だよ』って言ってました(笑)」

BE@BRICK READYMADE x A BATHING APE® 1000%

出典:bape.com

O:「すごすぎますね(笑)ちなみにそういう商品ってフリマアプリとかには出てなかったんですか?」

G:「これは出てなかったと思います。今回みたいに極端に数が少ない商品は市場にも出回らないので、現場から買い付けるしかなかったんじゃないかなと。」

バイヤーになりたい”あなたへ” 二人からアドバイス

Q:どちらのエピソードもすごい面白いですけど、それ以上に利益のインパクトがすごいですね。それでは最後の質問というかお願いです。これからバイヤーを目指そうと考えている人へ、オンラインと現場それぞれからアドバイスをいただけますか?

O:「BUYMAだけでバイヤー活動することが不安に思うかもしれませんが、リリースしてから14年くらい経っていて、企業としてもサービスとしてもすごくしっかりしていると思います。3年で2倍ずつ成長し続けているんですが、その一方BUYMAでモノを売ろうという人の数ってそんなペースでは増えていないんです。つまり、市場は伸びているのに参入している人が増えていないと。このギャップの影響で、一人あたりの売上は伸びている状態なんです。だから今参入すれば、プレーヤーの数も少ないので結構利益を取りやすい環境ではないでしょうか。」

G:「現場はとにかく情報が命なので、それをどうやって手に入れるかが大切です。初心者の方は、転売ブログとか書いてる人がいるので、それを参考にして何を買えばいいか、どこに並べばいいかを調べるといいですね。WEBに情報はたくさんあるので、それを見て自分で動くだけでちゃんと土俵には立てると思います。あとはとにかく現金の準備ですね。並びで良い番号引けたり、抽選当たったりしても、お金を持ってないと量を買えないので…」

「最後まで貴重なお話ですね。かなり盛り沢山な内容になりました、お二人共、今日はありがとうございました!」

オンライン VS 現場 バイヤーインタビュー(前編)

バイヤーズドライブ 体験記

スニーカーもファッションも大好きなライター。自社メディア「SPOAL」を10月より立ち上げ、アスリート×ファッションを切り口に数々の記事を執筆。KICKS CEO名義でインスタグラムもやってます。